日本の戦国時代のややこしさよりも、もっともっと酷いややこしさ。イギリスと言えばヨーロッパ風の華やかさを想像していたのですが、華やかさという言葉の意味が分からなくなりました。ただでさえ数字で区別する王様達がどんどん入れ替わり大変な中、自分が王になるために権謀術数をふるい、その王たちを裏から操ろうとする黒幕的な存在もいて、良い人だけではない世界。そう!皆様、分かる人にはリチャード3世のことと思い浮かべていただけたでしょうか!?(無理すね。笑)
リチャード3世と言えば、シェイクスピア作品でとても人気のある作品。けど、シェイクスピア作品の中で3大悪人のトップと言われるくらい、最悪のクソ野郎がリチャード3世なんです。王位継承者の甥である二人の少年を殺し、敵の妻だった女性を妻にした後、死に追いやる。そして、権力を強化するために若い姪を口説こうとし、最後の戦いでは馬を失い「王座のために馬を!」と叫びながら死んでいくダークヒーロー。
魅力的にカリカチュアされたシェイクスピアの作品は有名ですが、実際のリチャード3世が本当にそんなに悪いヤツだったのか、疑問に思う人は昔からいました。しかし、これが歴史の定説だったのです。イギリス王室では彼を簒奪者と記載していました。そんな彼をそんなに悪くない人ではなかったと考え、従来の定説では説明できない矛盾があることに気が付いた、イギリスのアマチュア研究家の主婦フィリッパが、リチャード3世の遺骨を発見。最終的には誤解を解き、イギリスの歴史で正式な王として認められたという話が最近、映画にもなっています。「ロスト・キング500年越しの運命」
人が生きたことの記録である歴史は、たとえ総体としての国の話であっても。一つ一つはこのような魅力的なエピソードにあふれています。しかもイギリスは日本でも詩聖と呼ばれているシェイクスピアの国。そしてシェイクスピアはエリザベス1世の時代の人です。シェイクスピアはリチャード3世以外にも多くの歴史劇を出しており、その参考にと手に取ったのがこの「物語 イギリスの歴史」でした。
もちろん、リチャード3世のエピソードも書かれています。リチャード3世の遺骨発見は最近の話でもあるため、コラムに分けて印象的に紹介しています。ですが、やはり多くの歴史を語るため、一つひとつのエピソードは早送りのようにも感じます。
それでも、イギリスという国に縁があったわけではない僕には、とてもよい参考書となりました。有名なエピソードは漏らさず全体像を与えてくれているのです。そして、その中では触れられてないその時代を生きた人たちの輝きがキラキラと漏れてくるようにも感じました。
人の人生において上手く行くことがあっても、それは歴史の視点では一瞬です。「盛者必衰」という言葉そのものがまさに歴史。それでも、物理的にも遠い、かの国がとても親近感をもって感じるような本でした。
